海自の最新哨戒機「P-1」優れた性能を支える搭乗員たち 多国間訓練で3度目の制覇 その実力を優勝チームが徹底解説
- 乗りものニュース |

日本の海を守るP-1哨戒機の乗る「シードラゴン2026」優勝チームにインタビュー
アメリカ海軍主催の多国間共同訓練「シードラゴン2026」で、海上自衛隊第3航空隊のP-1部隊が見事優勝を果たしました。同部隊の優勝は、今回で通算3度目となります。
海上自衛隊第3航空隊のP-1哨戒機(乗りものニュース編集部撮影)
同部隊は、防衛省旧技術研究本部と川崎重工業が開発した国産の哨戒機、P-1を運用する部隊です。
P-1は、海を空から監視する“眼”であると同時に、海中の異音を聞くことで、潜水艦や艦艇の接近を知る“耳”でもあります。では、同機はどのような人々によって運用されているのでしょうか。今回は特別な計らいで厚木基地を訪れ、実際に同機を動かす、優勝したP-1に搭乗したクルーに話を聞くことができました。
シードラゴン2026での競技について、派遣航空部隊指揮官は、主に潜水艦を探知して追尾する内容であったと説明しました。またこの競技で最も大事だったのがチームワークで、事前によく十分な意思疎通を図ったと派遣航空部隊指揮官さんは語ります。
「主に地上訓練装置等を積極的に活用しました。チーム内でミーティングを重ねるとともに、入念な事前訓練の方も重要だと判断して、実施しました。対潜哨戒はチームワークが非常に重視されますので、メンバーが決まった段階で技能や経験、チームワークなどを総合的に勘案して、成果が期待できる隊員を選出した形です」(派遣航空部隊指揮官)
P-1は、これまで海上自衛隊が使用してきたP-3Cと比べると、飛行時の安定性が格段に向上しているといわれています。また、IHI製のF7エンジンを4基搭載し、潜水艦が発する磁気の乱れを捉える磁気探知装置(MAD)を機体後部に備えるなど、海上自衛隊の任務に合わせて最適化された機体でもあります。
「アドベテック機(フライ・バイ・ワイヤ等)飛行制御を導入したことが大きな特徴となっております。それによって、良好な操縦性、および安定性を両立することが可能となっております。そのおかげで様々な任務で要求される操縦性だったり、安定性を、非常に高いレベルで実現しています」(派遣航空部隊指揮官)
とのことで、この安定性の高さこそ、同機を使う第3航空隊が、各国の哨戒機や技術力の高いクルーが揃う中でも最高レベルの練度を証明している一因でもあります。
また、機材のデジタル化もP-1では進んでいます。
「一番の変化はやはり装置のデジタル化と情報の統合です。情報を見やすく管理しやすくなったという印象があります。デジタル化によって操作性や確認作業の効率が向上しているのが大きな違いです」(機上整備員/FE:フライトエンジニア)
シードラゴンの訓練に関しても、FEが装置を適切に運用、監視し、他の搭乗員と連携して任務を支えることで、スムーズに哨戒などを行えたとのことでした。
デジタル化も進む機体の“眼”と“耳”
また、海上や海中に潜む脅威を探知するためには、“耳”と“眼”が必要になります。その役割を中心的に担っているのが、機上任務員(音響/非音響)です。
不審な船や海上を撮影する際の方法を教えるクルー(乗りものニュース編集部撮影)
音響員はその名の通り、投下したソノブイなどが拾う音などを参考に、水上艦や潜水艦などを探知したり、海中生物と艦艇の音を識別したりする役目を持つ人員です。同機の“耳”と言える存在です。シードラゴンの際にも、重要な役目を担った人々です。
「船は1隻ごとにかなり個性のある航行音を出します。そういった音を記憶して、潜水艦などを探知するのが仕事になります」(音響員)
艦船の音以外にも海中生物などの音が入るため、耳の良さだけではなく、記憶力や、素早く音を分類できる能力も求められるそうです。ただ、シードラゴンでは、普段とは違う戦術だったとのことで、その点が大変だったとのこと。
「初めて実施する海での環境把握や、まあ、シードラゴンならではの、ルールでしょうか。普段と違う戦術の違いが困難でした。事前訓練である程度の環境把握をして、本番前までにクルー同士で何回も話し合いをし、反復訓練を実施しました」(音響員)
ただ、P-1の探知能力はP-3Cに比べるとかなり優れているとのことで、その点が大いに役に立ったようです。
「捜索能力、識別能力は大幅に向上しており、そこが1番の魅力でもあります。また、戦術員との情報交換がより容易になったこともよくなった点ですね」(音響員)
一方、非音響員は、音響以外のレーダー、ESM、MAD、光波(※高画質カメラ等)、IFFの5つのセンサーを担当する、海を監視する“眼”といえます。
「シードラゴンはグアムで実施されました。天候が変わりやすい島のため、急に雲等々が湧いてくる状況があり、そういった場合に飛行ルートの提案等を積極的に実施しました。やはりP-3に比べて、各種センサーと識別能力等が向上するとともに2人配置になったので、より任務の精度が向上しました。また、スイッチパネルについてもタッチパネル式になったので、操作しやすいところが魅力です」(非音響員)
高い練度 そしてチームワークがもたらした優勝
そして、P-1の頭脳として各搭乗員を指揮し、同機が保有するすべてのセンサーを管制しながら、与えられた任務を達成できるよう戦術計画を立案し、実行させる役割を担うのが戦術航空士です。哨戒機は多くのクルーが乗る機体であるため、チームワークが非常に重要だといいます。
今回協力いただいたクルーの皆様(乗りものニュース編集部撮影)
「普段からそのクルーとのコミュニケーションを常に大事に思い、チームワークを向上させる空気作りを心掛けています。シードラゴンに関しても潜水艦の追尾や攻撃の精度向上が大きな課題でしたが、搭乗員全員で戦術を研究し、反復演練とイメージトレーニングを重ねた結果、優勝という成果につながったと考えています」(戦術航空士)
P-1はシステムも常にアップデートされているとのことで、成長する哨戒機であると戦術航空士さんは話していました。パイロットやセンサーマンとの戦術情報の交換が容易とのことで、戦術展開の幅が大きく広がった機体であるとのことです。
なお、P-1の低速での安定性に関してはかなり良好であると、クルーの皆さんは話していました。こうした能力は、日本の広大な周辺海域を長期間にわたって監視するために、民間機ベースではなく、一から専用機として開発された機体ならではの信頼性といえるかもしれません。
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