新戦闘機「首がつながった」日英伊 「空中分解」した独仏西、新戦車まで頓挫寸前! “国際共同開発”はこれからどうなる?
- 乗りものニュース |

独仏西は空中分解、日英伊はひとまず安泰
日本、イギリス、イタリアの3か国が共同で新しい有人戦闘機を開発するプログラム「GCAP」に2026年7月21日、カナダがオブザーバーとして正式に加盟しました。
GCAPの新戦闘機のイメージ(画像:BAEシステムズ)。
GCAPは開発費高騰に加えて、イギリスはアメリカから求められている国防予算の増額などを反映した国防計画の見直しと、見直した国防計画に基づく投資計画の発表が遅れたことなどから先行きが不安視されていました。しかし、キア・スターマー前首相が6月30日に、今後4年で86億ポンド(約1.8兆円)の予算を投じると公表して、当面共同開発の予算確保の目途が立ちました。
加えて、開発参加や完成機の購入を確約したものではありませんが、カナダのオブザーバー参加により国際的な信用度が高まったこともあって、GCAPのプログラム進行への不安はひとまず解消されたと言えるでしょう。
その一方で、ドイツ、フランス、スペインの3か国が進めていた新有人戦闘機「NGF」(New Generation Fighter)の共同開発計画は、2026年6月に正式に中止が決定しています。
この3か国は2019年6月に、第6世代戦闘機のNGFと、NGFを中核とする航空システム「FCAS」(フランス語ではSCAF)の共同開発で合意。NGFはドイツとスペインが運用しているユーロファイターと、フランスが運用しているダッソー・ラファールをそれぞれ後継するものです。
NGFの共同開発が頓挫した最大の原因は、共同開発参加国の企業がどの程度開発と製造を行うかを定めた「ワークシェア」と、開発に参加する企業の主導権争いにあります。さらには自前の核兵器と空母での運用能力を求めていたフランスと、その能力を求めていなかったドイツ、スペインの要求のギャップが埋まらなかったためと見られています。
各メーカーが「勝手に新戦車」 もう一つの危機的プロジェクト
ドイツとフランスの防衛装備品の共同開発ではもう一つ、ドイツ連邦陸軍が運用しているレオパルト2戦車と、フランス陸軍が運用しているルクレール戦車を後継する新型戦闘車両を中核とする戦闘システム「MGCS」も危機的状況にあると報じられています。
MGCSのプロトタイプの予想図。ただし話は進んでいない(画像:KNDS)。
MGCSは当初、2030年代に実用化される予定で計画が進められ、本来ならばレオパルト2とルクレールからMGCSの中核となる戦闘車両へスムーズに移行できるはずでした。しかし開発は難航を極め、実用化目標時期が2030年代から2045年へ繰り延べられています。
ただ、MGCSの開発にあたっては、ドイツの防衛大手クラウス・マッフィイ・ヴェクマン(KMW)と、フランスの防衛大手ネクスターが、MGCSの開発を視野に入れた合弁企業KNDS(KMW+Nexter Defense Systems)を設立しています。このためNGFのようなワークシェアや開発主導権をめぐる企業間の争いはNGFに比べて起こりにくくなっています。
とはいえ、MGCSは単なる新戦車の開発ではなく、複数の有人戦闘車両とUGV(無人車両)を組み合わせた陸上戦闘システムの開発プログラムです。そのため、中核となる有人戦闘車両については、求める能力の最適解を見つけるのが難しく、そのことが仕様のまとまらない最大の理由になっているようです。
2026年6月にフランスのパリで開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ」では、KMWとネクスター、さらにはMGCSにも参加しているドイツのラインメタルが、それぞれ思い思いの新戦車に関する展示を行っていました。このためMGCSの中核となる戦闘車両の開発も中止になるのではないかとの観測も生まれています。
ハードの共同開発はもう限界?
日本の一部メディアでは、NGFの開発中止が決まり、MGCSの中核となる戦闘車両も開発中止が取りざたされていることから、FCASとMGCSが頓挫したかのように報じられてもいますが、現時点ではそれは違うと筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思います。
NGFの開発が頓挫したFCASのイメージ(画像:エアバス)。
FCASはNGFと各種UAS(無人航空システム)や衛星、輸送機などのアセットを組み合わせたシステムですし、前に述べたようにMGCSは複数の有人戦闘車両とUGVなどを組み合わせた陸上戦闘システムです。
フランスとドイツは今のところUASの統御や情報交換、共同交戦能力を与えるFCASの「キモ」とでも言うべき「コンバットクラウド」の共同開発は継続する方針を示しています。MGCSの場合、仮に中核となる有人戦闘車両の共同開発が頓挫したとしても、UGVの統御などを行うシステムの共同開発は続くのではないかと思います。
戦闘機や戦闘車両のようなプラットフォームまで共通化されていた方が、共同交戦能力を持つうえでは望ましいことは確かですが、ハードウェアであるプラットフォームの共通化は、共同開発参加国の軍の要求や産業界のすり合わせが難しいのも事実です。
ドイツとフランスのやり方が成功するのかはわかりませんが、もし成功するのであれば、国際共同開発はGCAPのような共通のプラットフォームを開発する手法から、ソフトウェアであるシステムを共同開発する方向にシフトしていくのかもしれません。
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