メソポタミアで出土した戦闘機のナゼ オーパーツならぬMiG-25が埋められた経緯と目的
- 乗りものニュース |

21世紀初頭、メソポタミアの土中より戦闘機が発掘されました。もちろん古代文明とは無関係です。とはいえ空を飛ばしてナンボのはずの戦闘機がなぜ埋められていたのでしょうか。そこにはある独裁者の思惑が大きく関わっていました。
古代のミステリー…ではなかった「発掘されたMiG」
2003(平成15)年。人類文明発祥の地のひとつとして知られるメソポタミアにおいて、ある兵器が土中から発見されました。それは極めて高い冶金術によって製造されたステンレス鋼を主要な素材としており、重量にして実に約20tにも達する巨大な鉄塊でした。
ただただスピードのみを追求したその設計はまるで巨鳥のようです。2基のターボジェットエンジンによって、高度2万mを速度3000km/hで飛翔するモンスター。人類史上最速のジェット戦闘機、その兵器の名はMiG-25「フォックスバット」。
2003年にイラクで発掘され話題となった「メソポタミアのMiG-25」偵察爆撃機型(画像:アメリカ空軍)。
MiG-25「フォックスバット」は当然、何千年も前の古代兵器などではなく、1960年代に開発されたソ連製ジェット戦闘機です。メソポタミアの地から発掘されるにはあまりにも不釣り合いな近代兵器であり、土中から顔を出したMiG-25の写真が公開されると、そのこっけいさや「オーパーツ」のようなミステリアスさから、世界中で大きな話題となりました。
なぜ「メソポタミアのMiG-25」は生まれてしまったのでしょうか。そのミステリーを解き明かす鍵は「独裁者の哀れな末路」にありました。
メソポタミアは現在のイラクです。この国を20年以上にわたり支配した独裁者、サダム・フセイン大統領(当時)は、かつて隣国クウェートに対し侵略戦争を試みたり、毒ガス兵器によって少数民族を虐殺したりするなど、悪名高い暴君として知られた人物でした。
国際社会はフセイン大統領を封じ込めるために一致団結しました。国連は、大量破壊兵器(核、生物、化学)の保有を禁止し、また大量破壊兵器保有の疑いがある施設を調査する査察官の受け入れをイラクに対し求める安保理決議を採択します。
しかしフセイン大統領はこれに従いませんでした。大量破壊兵器を保有している事実を匂わせる発言を繰り返すとともに、意図的に査察官を妨害さえします。
なぜ戦闘機は土中に埋められたの?
アメリカのブッシュ大統領(当時)はフセイン大統領に対し、何度も安保理決議に従うよう警告を発します。それはフセイン政権を武力で打倒する用意があること、軍事力の行使もあり得ることさえ明言する強いものでした。そして実際に、イラクとの国境に軍隊をも集結させました。
それでもなおフセイン大統領は応じようとしません。その結果アメリカなどにより結成された「有志連合」は2003年3月20日、開戦に踏み切り、同4月9日に首都バグダッドを陥落させるなど、フセイン政権はあっというまに崩壊してしまいました。
発掘されたMiG-25は2022年現在、国立アメリカ空軍博物館において保管されている(画像:アメリカ空軍)。
イラクを制圧した有志連合は大量破壊兵器の捜索を開始します。ところが不思議なことに、何故かイラクの大量破壊兵器は発見できません。その代わりに土中からMiG-25が発見されるなど、各地に戦闘機が隠されていることが明らかとなりました。
MiG-25などが埋められていた理由そのものはすぐに判明しました。1991(平成3)年の湾岸戦争時、イラク空軍は戦闘機の多くを鉄筋コンクリート製の掩体(強化格納庫)で防御していましたが、アメリカ軍によって誘導装置付きバンカーバスター(貫通爆弾)を大量に投射され、多くの戦闘機が地上撃破されていました。
湾岸戦争において掩体では戦闘機を守れなかったという経験から、戦闘機をどこかに隠さなくてはならないという考えが生まれ、そして実際にMiG-25を埋めたのです。
謎のひとつはこれで解決しました。しかしまたひとつの謎が生じます。「温存してどうするつもりだった」のでしょうか。
戦闘機を埋めてどうするつもりだったの?
イラク戦争は、世界中の誰もがアメリカの勝利を確信し、実際フセイン政権は短期間で打倒されました。政権そのものが無くなるのに、なぜ戦闘機だけ残そうとしたのでしょうか。明らかに合理性がありません。
その答えはフセイン大統領が逮捕されたことにより、本人の口から明らかにされました。どうやら世界中でただひとりフセイン大統領だけは、自分が敗者となるなど考えてすらいなかったようなのです。
フセイン大統領の側近たちは、粛清すら厭わぬ強権的独裁者の機嫌を損ねてしまいかねない不愉快な事実よりも、フセイン大統領が好みそうな都合の良い言葉のみを伝えました。「アメリカの警告を無視した場合、大統領閣下、あなたは死にます」などとは、誰も言えなかったのです。
飛行場外に隠されていたイラク空軍のMiG-23可変後退翼戦闘機(画像:アメリカ空軍)。
こうしてフセイン大統領は、ブッシュ大統領の警告を単なる脅しだろうと思い込みました。万一の場合でも航空攻撃程度で済むだろうと甘く考え、自分の生死が掛かっていたにも関わらず、戦闘機を温存しなくてはならないという異常な決定を下してしまいます。
何のことはありません。「メソポタミアのMiG-25」とは『封神演義』に登場する殷の紂王、もしくは「裸の王様」など、世界中どこにでもある独裁者とそれを取り巻くイエスマンらの物語の産物に過ぎなかったのです。
もしもいま世界のどこかで、何の利益にもならないおかしな行動をしている独裁者がいるとするならば、ひょっとしたらその独裁者はいずれ「メソポタミアのMiG-25」を生み出すことになるかもしれません。
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