全国民の大問題! 日本の物流4割を支える「内航船員」若手が逃げ出す“3か月乗りっぱなし”の過酷なリアル
- 乗りものニュース |

日本の物流の“4割”を運ぶ縁の下の力持ち、その担い手が高齢化
トラック運転手の不足が心配される「物流2024年問題」。これは、2024年4月から運転手の時間外労働に上限が設けられ、長距離輸送の担い手が足りなくなると懸念されている問題です。
内航海運は日本の物流の4割を占める(画像:写真AC)
その解決策として注目されているのが、貨物を船に積み替えて運ぶ「内航海運」へのモーダルシフトです。内航海運とは、国内の港から港へ、鉄鋼や石油などの基礎物資を運ぶ国内専門の海運のこと。いわば“海のトラック”です。
その実力は数字に表れています。国内貨物のモード別輸送量は、トンキロベースで自動車が約5割、内航海運が約4割を占めます。トラックに次ぐ“第2の大動脈”として、日本の物流を陰で支えているのです。
ところが、この“海のトラック”こと内航船には、いま深刻な悩みがあります。それは、船を動かす「人」の確保が、年々難しくなっていることです。
国土交通省はこの状況を「2つの高齢化」と呼びます。船と船員の高齢化が同時に進んでいるのです。日本内航海運組合総連合会によると、内航船員は2024年10月時点で2万1586人と、ここ10年あまりで最も多い水準。ところが50歳以上が5割近くを占め、高齢化が深刻です。
なぜ、これほどまでに担い手の高齢化が進んでしまったのでしょうか。
外国人で補えない内航海運、「3カ月乗りっぱなし」の壁
高齢化の背景には、内航海運ならではの事情があります。国内の港から港への輸送には、外国の船による国内輸送を原則として認めない「カボタージュ制度」があり、日本の船と日本人船員による安定した輸送が重視されてきました。
海上物流にも「働き方改革」が必要になってきた(画像:写真AC)
海外と行き来する外航船では外国人船員が広く活躍していますが、内航海運では、経済安全保障や安定輸送の観点から、日本人船員の確保が重要な課題でした。人手不足を外国人船員で一気に補うのは難しく、国内の働き手の確保が大きなテーマになっています。
人材の奪い合いは求人倍率にも表れます。国土交通省海事局によると、2024年3月時点の内航船員の有効求人倍率は4.41倍。自動車運転者の2.58倍や全職業平均の1.28倍を大きく上回る、極端な売り手市場です。
さらに若手が定着しにくい大きな壁が、独特の働き方です。内航船員の勤務は「3か月乗船・1か月休暇」のサイクルが基本とされ、長期間の乗船など働き方の問題が、若手の定着率低下につながっているとされます。
船員の暮らしは、陸の仕事と大きく異なります。航海中は陸からの支えが届きにくく、電気や水道はもちろん、医療や買い物からも切り離された空間で、数週間から数か月を過ごすことになります。当然、少し沖合に出てしまうとスマートフォンも使えなくなります。
こうした働き方は定着率にも表れています。日本内航海運組合総連合会の資料では、新人内航船員の定着率は2015年の約85%から2020年に約78%へ低下。就職後3年以内に辞めた人では、職場の人間関係やパワハラを理由に挙げる割合が4割を超えるとされます。若手が続かず、ベテラン頼みの状況が、高齢化に拍車をかけています。
待遇改善も“無人運航船”も登場 海の物流を守る最前線
もちろん、業界もただ手をこまねいているわけではありません。働き方を変えようとする動きが、各地で始まっています。
進水式前の貨物船。そもそも運行を担う船員のなり手がいない(画像:写真AC)
たとえば配乗では、「3か月乗船・1か月休暇」だけでなく、「23日乗船・7〜8日休暇」や「45日乗船・15日休暇」といった短いローテーションの事業者もあります。また、若手の定着に向け、船内のインターネット環境を整える動きも出ています。
そして切り札として期待されるのが「自動運航船」です。日本財団が進める無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」では、2026年3月27日、第2ステージの実証船4隻すべてが国土交通省の船舶検査に自動運航船として合格し、商業運航を開始したと発表されました。
船員不足や人的ミスによる事故といった課題に、技術で人手を補い、船員の負担を軽くしようという試みです。
トラックの2024年問題で内航海運への期待が高まる一方、その船を動かす人材の確保は難しさを増しています。食料や日用品、ガソリンの安定供給にもつながる話です。海の上で日本の暮らしを支える人たちをどう守るかは、消費者にとっても他人事ではないのです。
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