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イチゴ「あまおう」の権利が切れ、全国で栽培可能に? “違法苗”も出回る? 権利に詳しい弁理士が考察する“消費者の在り方”

12,022 YOU
  • オトナンサー
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福岡のイチゴ「博多あまおう」(2020年12月撮影、時事)
福岡のイチゴ「博多あまおう」(2020年12月撮影、時事)

 冬から春にかけて、旬を迎えてきたイチゴ。中でも、福岡の品種「あまおう」(正式品種名は「福岡S6号」)は、「赤い・丸い・大きい・うまい(あ・ま・お・う)」という頭文字を取ったネーミングや、ジューシーな甘さで一躍有名となり、同県を代表するブランドとして人気になっています。2025年1月19日、「あまおう」を守る育成者(新しい品種を開発した人)の権利「育成者権」の有効期限が切れました。そして、同月20日からは同県以外でも同じ品種が栽培可能になりました。

 消費者にとって、どのような影響があるのか……。そして、「おいしいイチゴを食べたい!」と思ったときに気をつけるべきポイントとは……。商標や著作権といった知的財産権に関する業務を行う弁理士の筆者が、そのような疑問を解説していきたいと思います。

「育成者権」と商標の違い…実は“あまおう”を販売できない

 まず、「あまおう」の誕生から振り返ってみたいと思います。かつて、福岡県は“イチゴの生産量日本一”を目指し、県の農業総合試験場で5年ほどかけて新品種の開発に取り組みました。そして、2003年に誕生したのが「福岡S6号」、いわゆる「あまおう」です。濃い赤色で、大粒、そして強い甘みと香りが特長となっていて、高いブランド力を備えて海外輸出も拡大。今では、同県を代表する輸出農産物の一つとなっています。

 今回、「あまおう」の育成者権の有効期限が切れたわけですが、実は「あまおう」という商標名は福岡県が登録を続けているため、県外の生産者が自由に「あまおう」と名乗ることはできません。ここに、育成者権と商標の違いがあります。

 イチゴなど新しい品種を開発した人(育成者)は、「育成者権」という権利によって、その品種を増やしたり売ったりする権利を独占的に持つことができます。しかし、果物など草本作物の場合は、25年ほどでこの権利が切れる仕組みになっています。

 一方、「あまおう」という名前自体は商標登録によって守られています。商標権の有効期限は更新ができるので、福岡県外の農家が同じ品種を育てても、「あまおう」という名を勝手につけて販売することはできないのです。

イチゴの「違法苗」が出回る問題も

 近年、フリマアプリやインターネット通販を通じて、「違法苗」が出回っている問題が注目されています。農研機構が開発した「桃薫(とうくん)」というイチゴの苗が無断増殖され、ネットで販売されていた事例では、2024年12月に警視庁が農業者を含む複数の人間を摘発しています。

 新品種を開発するには莫大な研究費と労力が必要ですが、違法苗が横行すると正規の開発者に利益が渡らず、新たな品種改良が進まない恐れがあります。いくら、イチゴが好きと思っている人でも、安易に「安いから」「面白そうだから」といって違法苗を買って育ててしまうと、知らないうちに農業の発展を阻害する原因にもなりかねません。

 では、消費者はどうやって、正しいイチゴを買えばいいのでしょうか……。筆者は3つのポイントがあると考えています。

(1)きちんと産地・品種を確認する
 スーパーで並んでいるイチゴには、産地や品種が表示されています。「あまおう」と書かれていれば、基本的には福岡県産の正規品と思っていいです。ただし、今後は、もしかすると別の地域の生産者が「福岡S6号(あまおうと同じ品種)」と表記して売るケースも増えるかもしれません。その場合は商標名である「あまおう」とは別の名前で売られているはずです。「あまおう」ファンは、品種が同じであってもよしとするか、あくまで福岡県産の「あまおう」にこだわるのかの判断は委ねたいと思います。

(2)値段が不自然に安いものには要注意! 海外で出回った“おまうあ”
 ブランドイチゴは価格もそれなりに設定されています。市場価格より明らかに安いものが出回っていたら、転売や不正なルートを疑うことが必要になります。また、名前の微妙な違いにも注意が必要です。一時期、海外では日本産を偽装した「あまおう」ならぬ“おまうあ”という名前のイチゴが出回ったということがありました。

(3)ネット販売やフリマを利用する場合は出品者をチェック
 家庭菜園ブームでイチゴ苗を購入する人も増えていますが、フリマアプリなどで権利者の許可を得ていない違法苗を販売している可能性があります。商品説明をよく読み、怪しいと感じたら手を出さないのが賢明です。

「あまおう」の今後は…

「あまおう」の今後が気になる人もいるのではないでしょうか。育成者権切れによって同じ品種を作る生産者が増える可能性はあります。しかし、「ブランド力=『あまおう』という商標」を守るため、福岡県は商標権を更新しながら正規ルートでの出荷を管理していくはずです。逆に考えれば、「福岡県外でもあの味に近いイチゴが食べられるかも?」という期待もできます。

 ただし、これはあくまで品種そのものを栽培できるようになっただけで、「あまおう」という名称や品質管理のノウハウ、そして長年培った“本場の味”とはまた別のお話。同じ苗でも土壌や気候、栽培技術によって味に差が出るのが農産物の面白さでもあり、難しさでもあります。

 最後にお伝えしたいのが、「消費者がブランドを応援する一番の方法」です。ブランドイチゴの魅力は、長い研究と生産者の努力に支えられた“確かな品質”にあります。私たち消費者ができることとしては、正規のルートで育てられ、きちんと表示されたものを選び、適正な対価を支払うこと。そして、おいしいイチゴを味わいつつ、裏にある開発者たちの思いを想像してみることです。

「これからの日本の農業ブランドはどうなっていくのだろう?」と考える時に、結局は、私たち消費者が正しい買い方をすることが、結果としておいしい品種を生み出した生産者への応援につながり、日本の農業の未来をつないでいくということになります。今回の「あまおう」の「育成者権」の有効期限切れは、新たな品種改良の未来を切り開く一歩になるのかもしれません。

永沼よう子

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