旅客機の“本気飛び” 中国製と欧州大手では大きな差が…なぜ? かたや「大型機とは思えない」驚愕の動き
- 乗りものニュース |

エアバスとCOMACがエアショーで飛び比べ
2026年2月に開催された「シンガポール・エアショー2026」。世界中の防衛・航空企業が集結する本イベントにおいて、欧州を代表する航空機メーカー「エアバス」と、中国の新興メーカー「COMAC」もデモンストレーション飛行を披露しました。会場ではエアバスのA350-1000とCOMACのC919が相次いでフライトを行い、欧州の成熟メーカーと中国の新興メーカーの機体を見比べられる貴重な機会となりました。この飛び方が2社の機体で全く異なったのです。どういった理由からなのでしょうか。
デモフライトを行なうCOMACのC919(布留川 司撮影)。
A350-1000は座席数約350席の長距離ワイドボディ機。世界的に実績豊富で、航空会社にとっていわば定番の主力機です。一方のC919は座席数約160席の中距離ナローボディ機で、中国での商業運航が始まったばかり。規模も市場も異なる両者ですが、エアショーという見せ場では、メーカーの経験と展示戦略がそのまま飛び方に表れることとなりました。
旅客機のデモンストレーションフライトは、通常運航ではまず見られない動きを披露します。特にエアバスやボーイングのデモは、低速旋回や急角度のバンクなど「大型機とは思えない」動きで知られています。
今回のA350-1000も例外ではなく、会場上空での低速旋回に加え、左右へ切り返す“八の字”に近い連続旋回を実施。高度変化も織り交ぜるなど、観客の視界に常にダイナミックなシルエットを残し、旅客機とは思えないアグレッシブなフライトで喝采を浴びました。
対するC919は一転して落ち着いた印象。着陸脚を下げたまま低速で進入し、穏やかなバンクで旋回した後、胴体下のCOMACの自社ロゴを見せるローパス(滑走路上での低空飛行)を披露。最後は上昇しながら会場を離脱する、ごく手堅いデモでまとめました。筆者の隣のシンガポール人ジャーナリストも「非常に標準的なフライトだった」とコメントしており、意図的に無理をせず、安全重視で構成された展示であることが感じ取れました。
機体ではなく“組織としての経験値”の差
大型旅客機が派手なデモンストレーションを行う理由は、単なる見栄えではありません。低速での保持性能や姿勢制御の安定性、電気制御を用いた翼面の操舵技術「フライ・バイ・ワイヤ(FBW)」の優秀さを視覚的に示す意味があります。
同時に、その裏側には厳格な安全マネジメントがあります。エアバスやボーイングは開発試験パイロットが担当し、地上のシミュレーターで想定シナリオを繰り返し検証したうえで、当日のフライトに臨みます。長年の蓄積によって、「どこまで見せるか」と「どこから先は危険」という判断基準も成熟しています。
一方、COMACは依然として国際エアショーへの参加経験が少なく、今回のシンガポール・エアショーもまだ2回目。機体の性能というより、展示運用・安全審査・デモ構成といった組織としての経験値が相対的に限られていることが、フライトのトーンにも影響しているといえます。
実際に筆者が機内公開でC919を見学した際、同社パイロットは「C919でもA350のようなフライトは技術的には可能」と述べていました。つまり今回のフライトが控えめだったのは、性能ではなく“何らかの意図による運用上の制約”によるものだといえるでしょう。
今回のデモフライトは、機体そのものの優劣ではなく、メーカーごとの展示方式と「経験の積み重ね」がそのまま飛び方に表れた結果だといえるでしょう。今後、COMACが国際エアショーで実績を重ねていけば、C919がエアバス機のような積極的な飛び方を行なうようになるかもしれません。
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