どこにも行けない「44番出口」なぜ生まれた? 案内図に記載なし でも池袋駅前に堂々存在する謎施設の正体
- 乗りものニュース |
池袋駅東口に幻の「44」出入口が存在します。駅構内の案内図では存在が伏せられていますが、堂々と実在。しかし地下から地上に出ても、どこにも行けないのです。なぜこのような「純粋な出入口」が生まれたのでしょうか。
駅に一切案内がない「44」出入口
JR、東武、西武、東京メトロが乗り入れる池袋駅には、共通の「出入口番号」が設定されていまが、その中には、どこにも行けない幻の「44」出入口が存在します。
「44」出入口がある池袋駅東口(画像:写真AC)。
東京メトロ公式サイトの駅構内図には、商業施設内にある「10」から「20」、「23」から「33」は省略されていますが、駅の出口案内板には「1」から「43」(「21」は欠番)まで連番で記載されています。
ところが池袋駅には、幻の「44」が存在します。この出入口は地下には一切、案内がなく、地上にのみ痕跡がありますが、それを見つけるのは容易ではありません。なぜなら「44」があるのは東口駅前、明治通りとグリーン大通りの交差点のロータリーとタクシープールの間で、通路や横断歩道が一切ない離れ小島だからです。
仮に駅構内で「44」を偶然見つけて地上に出たとしても、どこにも行けません。なぜこのような一見無意味な出入口が生まれたのでしょうか。
「44」出入口の地下1階にあるのが地下街の「池袋ショッピングパーク(ISP)」、階段をさらに降りた地下2階にあるのが公共地下駐車場です。ISPが開業したのは昭和の東京オリンピック直前の1964(昭和39)年9月のことですが、当時の専門誌に掲載された平面図を見ると階段の位置関係など構造に変化はなさそうです。そうなると、変わってしまったのは地上ということになります。
ISPの出入口は、現在の出入口番号でいう「23」から「26」、「28」から「29」、「31」から「33」そして「44」の10か所あり、「23」から「26」は東口駅舎側、「29」と「31」から「33」は明治通りを渡った先にあります。つまり「28」と「44」だけが、道路に挟まれた「交通島」にあることが分かります。
「44」の目的地・交通島に何があったのか?
ここに何かあったのでしょうか。東京商工会議所の『東京商工会議所調査資料』1968(昭和43)年3号に掲載された地上平面図によれば、現在、タクシープールがある場所にはバス乗り場があり、池袋を拠点に亀戸、浅草、品川を結んだトロリーバス「102」「103」「104」系統を含む15路線のバスが発着していました。
「28」と「44」はバス乗り場を挟むように配置されていますが、「28」はバス停とは反対側から降りる構造になっており、「44」だけがバス停の脇から降りられるようになっています。つまりこの出入口は、バス利用客が地下街に入りやすいよう、さらに地下鉄に乗り換えしやすいように設置されたものと見て間違いないでしょう。
駅構内に掲出されている出口案内(枝久保達也撮影)。
しかし1968(昭和43)年にトロリーバスが廃止されるとバス乗り場は再編されたようで、1971(昭和46)年の航空写真を見ると「44」と「28」の間は緑地帯となっています。結局、「44」出入口は開業から4年で役割を終えてしまったのです。
緑地帯となってもしばらくは「44」と「28」の間には通路が設けられていましたが、この通路が閉ざされ「44」が完全な孤立に追い込まれる出来事が起こります。2004(平成16)年、明治通りの渋滞の一因となっていたタクシーの待機列を解消するために緑地帯を撤去して、タクシープールを設置することになったのです。こうして「44」は離れ小島として取り残されることになりました。
ではなぜこの出入口に「44」が割り振られたのでしょうか。この周囲のISPの出入口が「33」までのところ、丸ノ内線の南側通路にある「42」「43」の次の番号を振ったのは、明らかに意図的です。実際、現地で「43」までのように案内されていることからも「44」の存在は隠されていると言えるでしょう。
ISP開業当時、地下鉄に出入口番号は存在しませんでした。営団地下鉄がサインシステムの導入を決定したのは1970(昭和45)年のこと。1973(昭和48)年に千代田線大手町駅で行った実地試験が好評だったことから、1974(昭和49)年に開業した有楽町線池袋~銀座一丁目間11駅に全面導入。1975(昭和50)年から既存路線にも順次、拡大していきました。
丸ノ内線池袋駅の出入口番号が有楽町線と同時に設定されたものかは分かりませんが、いずれにせよ「44」出入口は1970年代後半には役割を失っていたことから、最後の番号が「一応」割り振られたものと思われます。
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