通常の3倍走った! 引退目前「ノロッコ号」の“最後の長旅” JR北海道のサービス精神が凄かった
- 乗りものニュース |

通常行程の3倍を走る延長運転
2026年10月10日にラストランを迎えたJR北海道の観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」。一か月ほど前の9月19日には川湯温泉駅までの延長運転を行いました。
くしろ湿原ノロッコ号(松永直也撮影)
通常、くしろ湿原ノロッコ号は、釧路駅と塘路駅を片道約45分の行程で運行していますが、今回の川湯温泉駅までの延長運転では、片道の乗車時間が通常の約3倍以上にあたる2時間半の長旅となります。
釧路駅を出発すると、すぐに釧路川を渡ります。ここは有名な撮影地であり、地元の方々も見送りに来やすい公園となっているため、この日も多数の方々が見送りに来ていました。
観光ガイドによる釧路湿原の歴史についての説明を聞きながら、列車は湿原エリアに入り始め、釧路川の蛇行に最接近する場所に差し掛かります。ここで「エゾシカが見られるチャンスです」との案内があり、列車はさらに速度を緩めました。乗客たちが目を凝らし始めると、一頭のエゾシカが木々の間から川の中へと現れました。
別れを惜しみながらさらに進むと、通常の終点である塘路駅に到着しますが、今回は延長運転号ですのでまだまだ続きます。
茅沼駅の近くでは、タンチョウも姿を現してくれました。標茶駅を抜けて酪農場の近くを走行するため乳牛も間近に見えたり、摩周駅を過ぎてからは背の高い防雪林の中を走行したりと、見飽きない車窓を楽しんでいると、川湯温泉駅到着の案内が入りました。
時計を確認すると乗車してから間もなく2時間半。案内に耳を傾け、景色を眺めていたらあっという間でした。この川湯温泉延長運転は、「くしろ湿原ノロッコ号」の最終運行前日にも、ラストランヘッドマークを装着して運行される予定です。
引退後はどうなる? 豪華列車「赤い星」と地元の切実な声
素晴らしい体験を提供してくれた「くしろ湿原ノロッコ号」ですが、ここで改めて同列車の来歴を振り返ってみましょう。
釧路川で水を飲むエゾシカ(松永直也撮影)
1987年に釧路湿原が国立公園に指定されたことを契機として、1989年6月に運行を開始しました。「ノロッコ」とは、ゆっくり走る「ノロノロ」と「トロッコ」を掛け合わせた造語です。釧路湿原の外縁に沿う形で伸びる釧網線の各所で減速運転が行われ、湿原特有の景色や野生動物をじっくりと眺めることができる列車として愛されてきました。
現在使用されているのは1998年から走り出した2代目の車両です。国鉄時代に製造された50系客車をベースに、広く開放的な窓と木製のベンチが設置された展望客車3両と、レトロさを感じさせる50系客車のオリジナルに近い一般客車1両の計4両で構成。これをDE10形ディーゼル機関車が牽引するという、令和の時代に乗車体験ができる客車列車として極めて希少な存在となっていました。
しかし、先日引退を迎えた「富良野・美瑛ノロッコ号」と同様、車両の老朽化などを理由に来月10日の運行を最後に、37年の長い歴史に幕を下ろします。
「くしろ湿原ノロッコ号」の引退以降、JR北海道は「スタートレイン計画」の一環として、2027年春から運転を開始する豪華観光列車の「赤い星」編成を使用し、釧網線での観光列車として導入することを計画しています。
一方で、新しい観光列車は豪華仕様となるため、これまでのように気軽に乗車しにくくなるのではと、地域住民からは惜しむ声も上がっています。
沿線自治体からもJR北海道に対し「釧路湿原をゆっくり走る臨時列車を走らせてほしい」との要請が行われており、JR北海道側も既存車両であるキハ54形気動車の改修を検討している模様です。引退後の釧網線における観光列車のゆくえ、そして今後の動向が引き続き注目されます。
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