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マイナス60度どう耐えた? 秋田で眠る南極点5180km走破のコマツ製“真っ黒雪上車”、そのスゴい発想とは

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真っ黒な車体は、寒さをしのぐためだった

 黒いクルマは、日なたでは暑くなりそう。その熱を寒さ対策に役立てようとした雪上車が、秋田県に残っています。南極点まで走ったKD60型雪上車です。隊員たちの住まいでもあった車内には、暑くて寝苦しい場所もあったといいます。黒いクルマを見ると、夏は車内が暑くなりそうだと感じる人もいるでしょう。ところが、その熱を取り込もうと、あえて車体を黒く塗った雪上車がありました。走った場所は、極寒の南極です。

Large figure1 gallery6白瀬南極探検隊記念館に展示されたKD60型雪上車(志田 裕撮影)。

 秋田県にかほ市の白瀬南極探検隊記念館には、その実物が展示されています。小松製作所が開発したKD60型雪上車の1台で、1968年に日本の観測隊が初めて南極点へ到達した際に使った車両です。

 車両重量は7.4トンで、標準積載時の総重量は7.9トン。最高速度は圧雪路で時速20キロです。車体下部には、雪上を走るために戦車のような履帯を備えています。飾り気のない箱形の車体は、雪の上を走る小さな家のようにも見えます。

 実際、隊員たちはこの雪上車で移動するだけでなく、車内で食事を取り、眠りながら長い行程を過ごしました。展示車両の車内には4人分の寝台や炊事設備、通信機などが収まっています。何か月も基地を離れる旅では、走れることに加え、その中で暮らせることも必要でした。

 黒い塗装には、太陽の熱を少しでも吸収して車内を暖める狙いがありました。車内温度は色だけで決まるものではありませんが、ここでは黒を寒さ対策に使おうとしたのです。型番の「60」は、摂氏マイナス60度に耐えられることを意味します。車内では、普通の室内にいるような服装で過ごせたといいます。

食べて、眠って、雪原を進む141日間

 1968~1969年に行われた第9次南極地域観測隊の極点旅行には、4台のKD60型が使われました。隊員たちを乗せ、燃料や食料、観測機材を積んだそりを引いて進みました。車内が住まいなら、後ろに引くそりは長旅を支える物資の倉庫といえるでしょう。

 一行は1968年9月に出発。途中で1台を故障により放棄したものの、残る3台は12月19日に南極点へ到達。往復の途中では科学観測も続け、翌1969年2月15日に出発地点へ戻りました。

 行動期間は141日間、走行距離は約5180キロ。当時、南極点往復の旅として世界最長とされた行程です。その長い旅で、雪上車は隊員たちを運び、外の寒さから守り、食事と睡眠の場所を提供しました。記念館の展示車両はその後も南極で使われ、累計約1万7000キロを走っています。

 展示車両は車内に乗り込むこともできます。寝台や炊事設備が収まった空間を見ると、南極点への旅が、毎日の食事や睡眠を重ねながら進むものだったことが伝わります。黒い塗装も、そこで生活するために考えられた工夫のひとつでした。

 その後、南極観測用雪上車は世代交代しました。例えば1991年から使われた「SM100S」の車体は、鮮やかなオレンジ色です。真っ黒なKD60型とは、外観も大きく変わりました。

 夏のクルマでは気になる太陽の熱も、南極では少しでも取り込みたいものでした。記念館に残る黒い車体は、極寒の地で走り、暮らすために選ばれた色なのです。

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