「ジャンボ機」の“コブ”なぜできた? 単に客数アップだけじゃなかった! 生みの親が見すえた“未来”とは
- 乗りものニュース |

頭の“コブ”は何のため? じつは転用を見すえてだった
「ジャンボ」の愛称で半世紀以上も世界の空を飛び続けてきたボーイング747。その姿でいちばん目を引くのが、機体の前部だけがぷっくりと膨らんだ“コブ”、いわゆる2階席「アッパーデッキ」でしょう。
ボーイング747、なぜ前側だけに出っ張りが?(画像:写真AC)
一見すると「席数を増やすため」「大量輸送時代に対応するため」と思われるかもしれません。しかし、コブが生まれた大きな理由は別にあります。将来の貨物型への転用を見すえ、機首から貨物を積み込めるよう操縦席を上へ移したことが、その始まりでした。
ハナシは1960年代にさかのぼります。当時、航空業界では「これからは超音速旅客機(SST)の時代になる」と固く信じられていました。フランスとイギリスが「コンコルド」を、ボーイング自身も「2707」という超音速機の開発を進めていたのです。
一方で、同社はアメリカ空軍の次期戦略輸送機計画でロッキードに敗れた直後でもあり、この計画に充てていた技術や技術者らを転用し、大量輸送が可能な民間機の開発へと動き出していました。
これが後の747になるのですが、その開発を大きく後押ししたのが、アメリカの名門「パンアメリカン航空」でした。同社を率いたファン・トリップ氏は、より多くの乗客を運べる大型機を求め、1966年4月に25機の747を発注します。
当時は、長距離の旅客輸送をやがて超音速機が担うと見られていました。そのため設計陣は、747の長期的な活躍の場は貨物輸送にあると考えていたのです。
ここで問題になったのが、「機首から大きな荷物をどう積み込むか」でした。
その答えが、機首先端が上にパカッと開く「ノーズカーゴドア」です。貨物型ならこれで、横のドアからでは入らない長尺の貨物もまっすぐ積み込めます。
ところが、機首から貨物を積み込もうとすると、通常は機首付近にある操縦席が邪魔になります。そこでボーイングは、貨物型で機首を開けられるよう、操縦席を主デッキより上へ移しました。これが、747独特の“コブ”を生んだのです。
さらに、操縦席を上へ移しただけでは胴体の上に段差ができ、空気抵抗が増えてしまいます。そこでコブの後ろ側をなだらかに伸ばし、現在見られる流れるような形に整えました。あの形は、貨物転用だけでなく、空気抵抗を抑えるための工夫でもあったのです。
コブの“空きスペース”が、まさかの「空飛ぶラウンジ」に
操縦席を2階に上げた結果、その後ろに空きスペースが生まれました。検討中、トリップ氏はこの空間の用途を尋ね、技術者が「乗員の休憩用に使える」と答えると、それを退けて「乗客用にしたい」と主張。こうしてここはバーやラウンジとなり、747を象徴する特徴のひとつになりました。
ボーイング747。旅客仕様は日本の航空会社からは姿を消し、現役で飛ぶのは海外の航空会社か貨物機のみだ(画像:写真AC)
日本でも、JAL(日本航空)が747の2階を和のラウンジ「Tea House in the Sky」に仕立てたことで知られます。貨物転用を見すえた配置から生まれた空間が、思いがけず旅の華やかさを演出する場にもなったわけです。
では、なぜA380のように胴体全体を2階建てにしなかったのでしょうか。初期の747では総2階建ての案も検討されましたが、整備や避難、貨物の積み込みの面で問題があるとされました。
とくに避難は重要です。アメリカの安全基準では、座席数が44を超える旅客機は、緊急時に90秒以内で地上へ脱出できることを実証しなければなりません。床の高い総2階建ては不利になりやすく、こうした事情も、前方だけを2階にした現在の形につながりました。
そして時代は流れ、超音速機が長距離旅客輸送の主役になるという予測は外れました。とはいえ、「747の長い将来は貨物輸送にある」という開発当時の見方は、別のかたちで現実味を帯びていきます。
いま旅客型の747は数を減らしましたが、貨物型は世界の空でなお活躍しています。日本では貨物専用のNCA(日本貨物航空)がボーイング747-8Fを運航しており、最大積載量は133tとされています。機首先端が上に開く「ノーズカーゴドア」を備え、長尺貨物などの搭降載に対応できます。
単に席を増やすためではなく、将来の貨物転用まで見すえて生まれた、あのコブ。半世紀以上前の開発者たちの“先読み”は、貨物型の747がいまも荷物を運び続ける現在につながっているのです。
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