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一般女性のリアルな話。人生迷子のためにつづられた「自分らしい幸せ探し」の方法

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  • マイナビウーマン
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私たちは一体なぜ、焦燥感を抱えていながら生きているのだろう。「25歳を過ぎる前には結婚して、子どもを持ち、子育てと家事中心で忙しくも充実した日々を送る」というレールはもうない。あった方がマシだったのではないかと思うことすらある。

レールがない人生は自由だが、代わりに自分でレールを作っていかなくてはいけない。子どもを持つ未来、持たない未来。結婚のために婚活する未来、将来は心配だけど、今の彼と結婚する未来。田舎に帰る未来、彼について行って仕事を変える未来――どの未来を選んでも正解・不正解はない。だからこそ、現代を生きる私たちには常に、選択と決断が迫られる。

誰に相談したところで、最後に決断するのは自分だ。だけど自分の選択一つで人生が変わるかもしれないのだから、誰だって慎重になるものだ。未来が見えないから余計不安なのだから、先輩方の人生の選択の瞬間を、誰かスプレッドシートにまとめておいてくれたらいいのに……。

そう思っていたら、本でまとめてくれている人がいた。ゼロからレールの向きを考えるのは苦手な、堅実派のあなたにすすめたい、生き方の選択肢を教えてくれる教科書。

【この本を読んで分かること】

・あらゆる選択肢の先にある色々な人生
・「自分らしい幸せ探し」の参考例
・「女の人生」における多様な選択肢の一例

■「結婚した後」「不妊治療した後」の人生

『私たちのままならない幸せ(ジェラシーくるみ著・主婦の友社)』には、顔も本名も表に出ていない一般の人の、今日ここまでの道のりが何通りも紹介されている。子どもを持ちながら離婚した経験のある人、再婚歴のある人、一人で生きようとしている人、不妊治療に取り組んだことがある人、などなど。

職場や昔の友人など、あらゆる人間関係をさらってみれば、それぞれ多様な人生を送っているものなのかもしれないが、下手に関係がある人には、なかなか人生譚は聞きづらい。結局、長く仲良くしている友人は自分と似たような価値観を持っている場合も多いものだし、誰にも聞けないけれど「これって私だけなのかな」と、孤独に苛まれることもある。

だけどこの本を読んでみると、まず「みんなそれぞれ色々ある」ことが分かる。いかに普段から興味を持っている物事以外の情報が、自分に届いてこないかをひしひしと感じる。結婚すべきかどうか悩んで、ちょっと検索をかけてみても、耳に入りやすい結婚「した後」のエピソードは、SNSで時々バズっているサレ妻的な下世話ネタばかり。

でも本当はもっと、色々あるのだ。結婚しても、本当に些細なことですれ違ってしまうこともある。不妊治療にトライしても子どもができなかったからといって、その後の人生がずっと暗いとは限らない。

SNSやショート動画で断片的な情報ばかり受け取っていると“一人だと大変”とか“不妊治療はつらい”とか、物事を表面だけで決めつけてしまいがちな気がする。やっぱりつらいのは自分だけじゃないし、みんな何かを決断する時には、それなりに助走が必要なのだ。

インタビュイーである女性たちの生き方にはさまざまなバリエーションがあったが、悩み、苦悩するタイミングは、どのエピソードでも共感できた。自分が検討している未来をすでに経験済みの人のインタビューは、ことさらに学びが多かった。

■失われた「先輩との対話の機会」を埋めてくれる

 著者であるジェラシーくるみさんは、普段から年代の壁や、女性の生き方について発信しているインフルエンサーでもある。“東大卒”としても有名な彼女による、視点のシャープなドキュメンタリーインタビューはポップで読みやすく、自分も観覧席でエピソードトークを聞いているかのような気持ちになる。

本を読んでいて気づいたのだが、職場と家、仕事と友人とのお茶を往復しているだけだと、なかなか「先人のアドバイス」を賜るタイミングがない。時代のうつろいとともに職場の飲み会は減っており、人の話を聞くこともなければ、同年代の友達以外に自分の話をすることもない。

面倒なコミュニケーションが減ってありがたい側面もあるのだろうが、私たちは「人生の先輩にアドバイスをいただく機会」を喪失したとも言える。

特に仕事によっては40代、50代以上の女性と話す機会など、なかなかない人も多いのではないだろうか。実際にそういった方がいたとして、先輩風を吹かせられるのも野暮ったいのだが、SNSで暴露話がバズりやすいように、私たちは常に誰かの「リアルな体験」を渇望しているようにも思う。

年代が違う人の発信は、今のネットの特性上、なかなか自分のタイムラインには流れてこない。こうして本にまとめてもらうことで、アラサーである自分のもとにも情報が運ばれてきたというのだから、本当にありがたい。

■「他人の人生を知る」というチート

 歳を重ねるに連れ、人と深く対話する機会というのは失われていく気がする。30代、40代はきっと、20代とは違った忙しさがある。人と人とのつながりが希薄になりつつある社会の中で、忙しさの合間を縫ってでも誰かに意見を求めにいける人がいるなら、きっとものすごいコミュ強だ。

だけど、どんなに忙しくても一人の時間はあるのが未婚のアラサーだ。人生の先輩に自分の背中を押してもらうために飲みに誘うのはハードルが高いが、移動の合間に本を読むことはできる。

自分の意見を内に溜め込み、誰からもツッコまれないでいると「これで失敗したらどうしよう」と、考えても仕方がないのに後の人生すべてに不安を感じることがある。そんな時にこそ、他人の人生を知るというチートを実践してほしい。

「私の時はこうだったけれどね」と教えてもらえるかどうかで、実現可能性とか、決意の固さとかが随分変わる場合があると思う。大学の時、先輩の教科書を借りているヤツは、一般教養科目の単位を絶対に落とさなかった。それと同じだ。経験者の話を聞いていれば、決断という試験の際にも、間違った選択肢を選びづらくなるはずだ。

体調や生理周期によって考え込むことがあり、人との対話が大好きというほどでもない人にこそ、この本をすすめたい。本を手に取るだけで、色々な人生、色々な選択を疑似体験することができる。偏見や思い込みにツッコミが入るかもしれないが、ジェラシーくるみさんの柔らかくも的確な文章が、きっとマイルドにアドバイスを渡してくれる。

人生のレールをゼロから考えるのは難しい。だけど、色々なレールを見てみたら「私はこっち側がいいかも」と、方向性くらいは決められるかもしれない。30代の多様過ぎるレールづくりに取り組む前に、ぜひ一読することをおすすめしたい。

(ミクニシオリ)

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