中国メーカーがわざわざ軽自動車を作った「本当の狙い」とは? “足りなかったもの”を一気に獲得したBYD
- 乗りものニュース |

重要なのは「日本で認められること」
2026年7月、中国のBYDが新開発した軽自動車「ラッコ」が、ついに日本市場へと投入されました。軽自動車の規格は日本独自の枠組みであり、これに適合するモデルを、わざわざ海外のメーカーが新規開発して販売するのは極めて異例です。
中国・BYDが新規開発した軽自動車「ラッコ」
グローバル基準の車両クラスではないため、世界規模での販売戦略を描きにくく、また日本国内においても、国産メーカー間での熾烈な販売競争が繰り広げられている軽自動車。ゆえにBYDがシェアを獲得するのは簡単な話ではなく、仮に成功を収めたとしても、ビジネス全体としての旨味はあまりないようにも捉えられるでしょう。
ではなぜ、BYDは軽自動車の市場に挑戦したのでしょうか。ラッコ誕生の経緯、そして同社が描く軽自動車の戦略について分析していきます。
BYDが軽自動車に挑むきっかけとなったのは、2023年に開催された「ジャパンモビリティショー」です。この年、BYDは大きなブースを構え、大々的なプロモーションを展開しました。また同社にとっては、日本の自動車ショーにブースを構えること自体が初めてでした。総裁である王伝福氏をはじめ、中国本土からも多くの重役が視察に訪れました。
そしてこのとき王総裁の目にとまったのは、日本の街中を走る無数の軽自動車でした。特に高所得者が多い都市部でも、軽自動車がたくさん走っているのが強く印象に残ったといいます。
実は、BYDは目の肥えた日本のユーザーに認められることを「自動車メーカーとして意義が大きい」と捉えているメーカーです。王総裁は、日本市場における軽自動車の重要性を肌で実感し、「日本に根を張るならば軽しかない」と、モデル投入を決意したそうです。
こうして、軽自動車の自社開発は総裁肝いりのプロジェクトとしてスタートしました。つまりBYDが軽自動車を作ったというのは、目先のビジネスというよりも「日本の顧客に支持された」という実績を作り、ブランドの価値を高めるための戦略だと解釈できるでしょう。
モットーは「マーケットが求めるもの第一」
また、BYDの商品企画や開発には「マーケットが求めるものを第一に」という理念があるそうです。それを存分に生かす商品としても、軽自動車の開発はエンジニアにとって腕が鳴る仕事だったことでしょう。
中国・BYDが新規開発した軽自動車「ラッコ」
開発チームが最初に行ったのは、調査部隊を日本に1か月間滞在させることでした。彼らは都市部で、地方で、どのようなユーザーが、何を利点として軽自動車を選んでいるのか、徹底的にリサーチしました。
そうして、スライドドアが必須であることや、日本の生活用品の大きさに合わせた収納スペースなど、重要なポイントを抽出。ラッコの設計に反映させていきました。最終的な作りこみの段階では、日本のメーカーで軽自動車を担当していた人材を招き入れ、市場ニーズと擦り合わせていったそうです。
クルマ本体以外も「日本流」に
こうした「マーケットが求めるものを第一に」という企業戦略は、クルマ自体の造りに限らず徹底されています。それが日本流の販売手法を採り入れた、5年据置型ローンの「RACCO楽っとプラン」です。これは日本の新車販売で人気の「残クレ」こと残価設定型クレジットにならったもので、5年後の残価を50%に設定して、月々の支払い額を抑えるプランです。
残クレとの大きな違いは、残価保証がないという点です。これは「ラッコのリセールバリューが期待できないから」という訳ではなく、BYDは日本のメーカーと異なり、日本国内に自社ファイナンスを有していないためです。
それでも、BYDは日本の大手信販会社であるジャックスと提携して本プランを実現させましたが、こうしたローンプランも、リセールバリューが高い軽自動車だからこそ実現できたことだそう。同社のスタッフは、「これまでのBYD車では、ローンの提供もできなかっただろう」といいます。ラッコはクルマの造りだけでなく、買い方も「郷に入りては郷に従え」を徹底した商品なのです。
このほか、保証内容の手厚さを従来以上にアピールしているのも、ユーザーに安心して購入してもらうための施策でしょう。これまで日本に投入されてきたBYD車は「BEVに抵抗が無いアーリーアダプター向け」という性格の強いモデルでしたが、ラッコは「軽ガソリン車に乗っている人も違和感なく、不安なく乗り換えられる」1台を目指したモデルとのこと。
つまりまとめると、「BYDラッコ」という軽自動車は、モデル単体での商業的成功だけでなく、「日本市場での高いブランド価値の創造」に向けた、はじめの1歩といえる1台なのです。
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