標高2450mを走る「後ろが超レアなバス」とは? 世界に4台だけ、うち3台が車歴20年 今後の行方を責任者に直撃!
- 乗りものニュース |

「バスの日」を前に展示
9月20日は「バスの日」です。長野県と富山県にまたがる世界級山岳ルート、立山黒部アルペンルートの立山高原バスには、世界に4台しかない“超レア仕様”バスのうち3台が集合しています。
立山高原バスの2006年式「セレガR ハイブリッド」新灯火規制対応車(大塚圭一郎撮影)
運行する立山黒部貫光(富山市)は2026年8月29日、アルペンルート全線開業55周年を記念した「2026 のりものデイズ」でこのバスを室堂(富山県立山町)に展示しました。当日訪れた筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は展示されたバスを見学させてもらい、整備現場の責任者に「あと何年頑張れそうですか」と直撃しました。
立山高原バスは、立山ケーブルカーと接続する美女平(立山町、標高977m)と、室堂(標高2450m)をつなぎます。23kmの道のりの標高差は1473mに達し、約50分かけてつないでいます。美女平で立山ケーブルカー、室堂で立山トンネルの電気自動車(EV)バスとそれぞれ乗り継ぐことができます。
走る立山有料道路の車窓からは、幹回りが約9.4m、高さ約21mの富山県の県木タテヤマスギ「仙洞杉」の脇を通り、落差が350mと日本一の国指定の名勝「称名滝(しょうみょうだき)」を遠くに望むことができます。このような景勝地ではバスが一時停止したり、速度を落としたりしてくれるためじっくりと観賞できます。
冬季閉鎖解除後の4月中旬のシーズン開始から6月下旬にかけてはさらに、高い所で10~20mある雪の壁「雪の大谷」を楽しめます。
筆者が2025年6月に立山高原バスに乗った際には道路脇に野生のニホンザルの姿を見つけて「あっ、サルがいる」と言うと、運転手が「この道沿いによく出没しますよ」と教えてくれました。
「世界に1台だけのバス」も
立山高原バスには、大部分が中部山岳国立公園に含まれている立山黒部アルペンルートの美しい自然を満喫できる「世界に1台だけのバス」もあります。
それは天井部分もガラス張りにした特別仕様車「E~SORA立山パノラマバス」です。日野自動車の「セレガ ハイブリッド」を東急のグループ会社、東急テクノシステム(川崎市)が改造して2015年に運行が始まりました。
立山パノラマバスは旅行会社の団体旅行を中心に運行されますが、間合いなどに立山高原バスにも充当されています。筆者が訪れた2026年8月29日には、立山高原バスの一部便に使われていました。
「世界で4台のうち3台」のレア車両とは一体?
当日、立山高原バスについて熱心に説明してくれた立山黒部貫光運輸事業部自動車運輸区所属で、立山高原バスの運転手を務めている岡井元希さんは「立山パノラマバスは横方向だけでなく上方向の景色も楽しんでいただけ、バスの中なのに開放感があると思います。仙洞杉や雪の大谷といったビューポイントでのお客様からの歓声も、他のバス以上に大きいように感じます」と利点を強調します。
立山黒部貫光の「E~SORA立山パノラマバス」(大塚圭一郎撮影)
岡井さんもハンドルを握るときには「代わりのいない1台だけの車両なので、運転するときは気持ちの入りが少し違います」と明かしました。
では、冒頭で挙げた「世界で4台しか造られず、うち3台が立山高原バスに集結している」超レア仕様バスとは何でしょうか。それらは日野の2006年式「セレガR ハイブリッド」の末期に生産されたモデルで、2006年1月に施行された道路運送車両法の新灯火規制に対応させた車両です。
新灯火規制は後方の普通乗用車からの視認性向上などを目的としており、対応させた4台は後部の灯火類のレイアウトが変わっています。具体的には後部のテールランプとウィンカーを移植しており、方向指示器を出した時には従来型より低い位置にあるウィンカーがオレンジ色に点滅します。
2006年式「セレガR ハイブリッド」は総排気量10520ccのターボディーゼルエンジンをモーターがアシストしており、岡井さんは「パワフルな走り心地です」と説明しています。
独特な後部デザインの2006年式「セレガR ハイブリッド」も、導入から20年が経過しました。立山黒部貫光は日野の新型「セレガ」を順次導入する計画だけに、「いつまで運行するのだろうか」と気にしているバス愛好家の声を聞きました。
そこで筆者が整備現場の責任者、立山黒部貫光運輸事業部運輸課自動車運転区の早川 忍技術長に「あとどれぐらい頑張れますか」と尋ねると、「少なくともあと5~10年程度は走り続けると考えられます」との回答でした。
廃車は「順番」に
早川技術長は2006年式セレガRの置き換えが少し先になる理由として「立山高原バスにはより旧式の2003年式から2005年式まで計7台の日野セレガRがあり、古い車両から少しずつ廃車を進め、その先に2006年式を廃車予定のためです」と説明してくれました。
立山黒部貫光運輸事業部運輸課自動車運転区の早川 忍技術長(大塚圭一郎撮影)
「特に2003年式から2004年式のセレガRは部品製造中止品が増えてきている上、現在40万km程度の走行距離となっており、山岳道路を常に走行するシビアなコンディションのため走行距離以上の消耗、経年劣化が進んでいると考えられます」
早川技術長は整備や修理の難しさをこう指摘し、「今後新車を1~2台導入する場合には、最低1台を廃車にする予定にしています」と明かしました。ただし、「経年劣化が著しい、または修理不能などの車両が発生した場合には順番が変わる場合もあります」と補足しました。
登場から20年が過ぎた“超レア仕様”バスには運行している立山有料道路のように険しい道が待ち受けているものの、幕引きまでは力強い走りで乗客を楽しませてくれそうです。
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