「クラウン3000台積み」トヨタの巨大LNG自動車運搬船が2隻体制へ “次の燃料”も決定済み!? どんどん進む“車輸送の脱炭素”
- 乗りものニュース |
トヨタグループの完成車輸送を担う新しいLNG自動車運搬船(RORO船)の2番船が完成。2隻体制で「クラウン6000台ぶん」の輸送にかかる環境負荷の低減につなげます。実は国内向けに“次の燃料”の船も用意するようです。
「クラウン6000台ぶん」の輸送にかかるSOx“ほぼゼロ”に
トヨタグループのトヨフジ海運が発注した2隻目のLNG(液化天然ガス)燃料RORO船「TRANS HARMONY EMERALD(トランス・ハーモニー・エメラルド)」が2024年11月15日、三菱重工業下関造船所で進水しました。次世代の自動車船隊を象徴する船として2025年6月から日本―東南アジア航路でトヨタ自動車をはじめとする完成車輸送に従事する予定です。
進水したTRANS HARMONY EMERALD(深水千翔撮影)。
「TRANS HARMONY EMERALD」の命名・進水式はトヨフジ海運の武市栄司社長や三菱造船の上田伸社長をはじめとした関係者と一般公募見学者、合わせて約1000人が見守る中、盛大に執り行われました。
同船は1番船の「TRANS HARMONY GREEN」と共にトヨフジ海運のアジア環境フラッグシップとして位置づけられ、船体のカラーリングデザインも既存船から一新しています。
トヨフジ海運は2050年までに船舶のCO2(二酸化炭素)排出ゼロを目指す「トヨフジ環境チャレンジ2050」を掲げており、同社の広報担当者は「今後は環境に優しい新燃料船で船隊の代替を進める方針だ。カーボンニュートラルに向けてできることからやっていく」と話していました。
両船とも、LNGと重油を燃料として使用できる2元燃料(DF)エンジンを搭載しているのが特徴で、現在、就航している同規模の重油燃料船と比較して、船型改良などの効果も含め、燃焼時のCO2(二酸化炭素)排出量を35%削減。さらに硫黄酸化物(SOx)の排出も99%削減できると見込まれています。
全長は195m、全幅は30.6m、総トン数は4万9500トンで、三菱重工広報によれば「下関造船所で建造可能な最大級の船」です。航海速力は19.5ノット。積載車両台数は“トヨタクラウン換算”で約3000台です。
2025年6月予定の引き渡し後は、アジアの主要港を定曜日、定間隔で結ぶ「アジアウィークリーサービス」へ投入されます。これは横浜や名古屋で完成車などを積み、レムチャバン(タイ)、ポート・ケラン(マレーシア)、シンガポール、パティンバン(インドネシア)といった東南アジアの各港を結ぶ航路となっています。乗用車以外にはフォークリフトや建機といったものも積載します。
三菱にも大きな実績に?
一方で課題となるのがLNGのバンカリング(供給)です。寄港する中京地区のLNGバンカリング船は「かぐや」1隻のみ。日本全体を見ても関東地区の「エコバンカー東京ベイ」は就航が遅れており、稼働しているのは九州・瀬戸内地域の「KEYS Azalea」と合わせて2隻にすぎません。そのため「TRANS HARMONY EMERALD」はシンガポールやマレーシアといった地域でLNG燃料の補給を受けることになります。
三菱造船はこれまで商船三井さんふらわあのフェリー「さんふらわあ くれない/むらさき」(1万7114総トン)やKEYS Bunkering West JapanのLNGバンカリング船「KEYS Azalea」(4744総トン)といったLNG燃料船を建造してきました。トヨフジ海運の「TRANS HARMONY GREEN」と「TRANS HARMONY EMERALD」も手掛けることで、環境規制への対応で代替需要が見込まれる外航RORO船の分野でも実績を積み重ねています。
次は「メタノール船」
さらにトヨフジ海運は内航向けに、メタノール燃料RORO船2隻を導入することを決めています。2024年6月に三菱造船との間で建造契約を締結し、竣工は2027年度を予定しています。
内航RORO船でメタノールを主燃料として使用する船は初めてです。1隻目はトヨフジ海運が保有し、2隻目はトヨフジ海運と福寿船舶が共同で保有します。
新造メタノール燃料RORO船のスペックは、長さ約169.9m、幅約30.2m、総トン数約1万5750トン。乗用車の積載能力はトヨタクラウン換算で約2300台です。船首には風防スクリーンと垂直ステムを採用して推進抵抗を低減、高効率プロペラや抵抗低減型高性能舵を組み合わせた独自の省エネシステム技術により燃費を改善します。
主機関には、メタノールとA重油それぞれを燃料として使用できる高性能DFを搭載します。メタノールは、同じ船型で重油を使用した場合と比較して、CO2排出量を10%以上削減することができるため、環境負荷の低減につなげることが可能です。
トヨフジ海運のトヨタ完成車輸送のイメージ(画像:トヨフジ海運)。
トヨフジ海運の広報担当者によると、「TRANS HARMONY EMERALD」を含むLNG燃料RORO船には、水素と回収したCO2(二酸化炭素)を合成した「合成メタン」の使用も視野に入れているとのこと。メタノール燃料RORO船にもバイオマス由来や回収したCO2と再生可能エネルギーで生成した水素との合成燃料「グリーンメタノール」を活用することで、ライフサイクルを含めたCO2排出量の更なる削減を図っていくことが考えられています。
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