曲選びは電話帳のような「分厚い本」 昔懐かしカラオケボックスの歴史を振り返る
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カラオケが「全世代の娯楽」に定着するまでの歴史
ひとりカラオケは楽しいものです。
東京都内に住んでいてうれしいのは、今すぐひとりでうたいたいな~と思っても、どこかしら近くにカラオケ店があること。ひとりカラオケ専門店も増えましたしね。
筆者(昼間たかし。ルポライター)もときどき出掛けては、東海林太郎の「旅笠道中」なんかをうたっているわけです。ところが、このところは新型コロナウイルスによる外出自粛が要請されて……。
早く収束することを願って、今回はカラオケの歴史について振り返ってみたいと思います。
カラオケの発明には諸説ありますが、ギター片手に酒場を回る流しからカラオケ装置への転換が始まったのは1970年代からです。
この時代のカラオケの多くはスナックや酒場、飲食店に置かれているものでした。もっぱら酒の席の余興に使うものだったのです。
そのスタイルを転換させ、歌うことを目的として人々が集うビジネスとして誕生したのがカラオケボックスです。
始まりは、国鉄の中古コンテナ
最初のカラオケボックスは1985(昭和60)年に岡山県早島町に開業した「イエローBOXだといわれています。
これは、文字通りのボックスです。当時、国鉄は民営化を前に国際規格に合わないコンテナを放出していました。多くは倉庫に使用されていた中古コンテナを利用したのが、このカラオケボックスだったわけです。
この新業態は、瞬く間に人気を得て模倣する業者が相次ぎます。昭和から平成に代替わりする1989年になると、発祥の地岡山県には53店舗を数えました。
しかし、いかなるビジネスでも黎明(れいめい)期は問題が起こるもの。室内の様子を確認できないカラオケボックスは未成年が飲酒や喫煙をする非行の温床になっているとか、ラブホテル代わりに使われているとかネガティブな印象を持たれました。
そうした混沌(こんとん)とした時期を経て、カラオケが健全な娯楽として定着をみたのはバブル景気の終わった1990年代初頭のことでした。
気軽に利用できる手軽なレジャーとして人気を集めたカラオケボックス(もう、すでにボックスではありませんが)は1990年代後半になると、都心部では供給過剰に陥ります。
そこで始まったのが、激烈なダンピング合戦でした。
娯楽の多様化の果て……「1時間100円」も
多くのチェーンが、日中の時間帯を空室にしておくなら100円でも回収しようと、繁華街には昼間なら1時間100円、さらには50円という店まで登場します。
そこまで市場を拡大させたカラオケ業界。1996(平成8)年には全国でルーム数が16万室を突破します(『AERA』1998年2月2日号)。
ところが、この頃から成長には不安も見られるようになります。お得意さまであったはずの高校生・大学生など若者の客が減る現象が見られるようになったのです。
その理由として挙げられるのは、娯楽の多様化と固定費(人件費や家賃など、変わらず発生する費用)の増加です。
1990年代後半の若者を見ると「プリクラ」をはじめ、カラオケのライバルとなる多くの娯楽が登場しています。
そして、携帯電話の普及も始まっていました。消費の手段が多様化したことで、カラオケは埋没しそうになってしまったのです。
さらに、この時期のカラオケの悩みとなっていたのが通信カラオケの普及による曲数の増加です。
通信カラオケの普及で、各メーカーは1万曲を超える曲数をそろえるようになりました。しかし、現在のようなリモコンはまだ登場していません。
自分の歌いたい曲があるのか、あるいはどんな曲が登録されているのかを確認するためには、電話帳のように分厚い「目次本」をめくり、アーティスト別・曲名別で五十音順に掲載されているページを探し出して、「曲番号」などと呼ばれる数ケタの数字をリモコンに入力する……という手順を踏んでいた時代だったのです。
こうして一時は低迷するかにみえたカラオケでしたが、そうはなりませんでした。
身近な娯楽として、全世代に人気
供給過剰のなかで生まれた1時間100円のような激安価格が功を奏したのか、世代に関係なくカラオケが、より身近な娯楽として定着していったのです。
もちろん価格が激安ですので、常に絶好調というわけにはいきません。
全国カラオケ事業者協会のデータによると市場のピークは1996(平成8)年の6620億円。その後は右肩下がりが続いたものの、2015年には3994億円まで盛り返しています。
今、繁華街にあるカラオケボックスを見てみると、どこも安価。それでいて4000億円弱の市場が存在しているということは、いまだ人気衰えずということでしょう。
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