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札幌~函館「2時間増しの特急」に臨時以外の価値はないのか? 豪雨被害で再び脚光“廃止確定”の山線

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室蘭本線の被災で特急「ニセコ」が急遽運転

 2026年8月27日に北海道を襲った記録的な大雨により、JR室蘭本線では路盤流出や土砂流入、線路冠水が発生。室蘭本線・千歳線経由で札幌と函館を結ぶ特急「北斗」は運休(または部分運休)を余儀なくされました。JR北海道は代行バスや臨時列車を設定して札幌―函館間の輸送を確保しましたが、室蘭本線の不通は9月9日まで続きました。

Large figure1 gallery17キハ261系5000番代「ラベンダー編成」で運転された特急「ニセコ」(古橋龍一撮影)

 そうした状況のなか、復旧直前の8・9日に追加運転されたのが、特急「ニセコ」です。小樽・倶知安を経由する函館本線の通称「山線」を通って札幌-函館間を結びます。近年は毎年秋に観光向けの列車として設定されており、2026年も9月の土休日などを中心に計16日間の運転が予定されています。

 9月8・9日は本来の運行日ではなかったのですが、そこは室蘭本線被災という苦境とあって急遽増発となりました。使用車両は、キハ261系5000番代「ラベンダー」編成。普段は観光利用がメインですが、このときばかりは札幌・函館を乗り換えなしで結ぶ都市間輸送の一翼を担い、ほぼ満席という盛況ぶりを見せました。

「山線」の歴史と幹線としての役割

 この異例の運転によって改めて注目されたのが、山線の存在です。函館―札幌―旭川を結ぶ函館本線のうち、山線は長万部―倶知安―小樽の140.2kmを指します。その名の通りニセコや倶知安エリアの山岳区間を走ります。

 1905(明治38)年の全通以来、この鉄路は長らく道南エリアと道央エリアをつなぐ幹線として賑わいを見せました。青函連絡船で本州から北海道へ渡った乗客は、函館から山線を経て札幌方面へ向かっていました。

 しかし山線は急勾配・急カーブが続く難所であるため、高速化には不利。1960年代以降は海沿いの東室蘭・苫小牧を経由する室蘭本線・千歳線ルート(通称「海線」)に主役の座を譲ることになりました。1986(昭和61)年に山線から定期の特急・急行列車が消滅すると、以後はローカル線として“札幌・函館を結ぶ裏ルート”となります。

 そんな山線が再び「幹線」の役割を果たしたことがありました。

 2000(平成12)年の有珠山噴火で室蘭本線の長万部―東室蘭間が不通となり、寝台列車を含む特急列車や貨物列車が山線経由で運転されたのです。札幌方面と函館方面を鉄路で結ぶバックアップルートとして、山線が久々に大きな役割を果たしました。

「山線」活用しないの?できないの?

 今回の室蘭本線不通でも、その存在意義が浮かび上がった、と見ることができます。しかし、2000年当時のように特急「北斗」をそのまま山線へ回すことは現在は困難です。「北斗」に使用されるキハ261系1000番代は、山線の保安設備に対応しておらず、そのまま入線させることができません。

 山線そのものにも、終わりの時が近づいています。北海道新幹線が札幌まで延伸開業すると、その並行在来線として山線は廃止となる方針が決まっています。札幌延伸は現在、早くとも2038年度末頃と見込まれています。

5時間33分の「山線」旅を満喫

 室蘭本線が復旧した翌日の9月11日、筆者は函館発札幌行きの特急「ニセコ」に乗車しました。

Large figure2 gallery18倶知安駅では駅員による出迎えも(古橋龍一撮影)

 函館発は13時55分、札幌着は19時28分と、5時間33分にも及ぶ列車旅です。通常の特急「北斗」なら札幌―函館間を3時間40分前後で結ぶため、2時間近く余計にかかります。

 速さでは特急「北斗」に到底及びません。しかし「ニセコ」は、その長い乗車時間そのものを楽しむ観光列車として人気を博しています。“蝦夷富士”とも称される羊蹄山の勇姿は、山線の沿線風景の象徴です。

 長万部付近では内浦湾(太平洋)に沿い、小樽付近では石狩湾(日本海)を望むこともできます。1本の列車で二つの海を眺められるのも、この列車の特徴でしょう。

 使用車両は、キハ261系5000番代「はまなす」編成。全車指定席の5両編成で、札幌寄りの1号車には「はまなすラウンジ」と呼ばれるフリースペースが設けられています。窓側に向いたカウンター席や、グループで利用できるボックス席を備え、乗客なら誰でも利用可能。記念撮影用のオリジナルフォトパネルも設置されていました。

 乗車中には北海道森高等学校によるオリジナル商品の販売が行われました。大沼公園駅、ニセコ駅、倶知安駅では地元特産品の販売や観光PR、出迎え・見送りなどのおもてなしも行われ、長時間の乗車でも飽きることはありません。また、沿線の高校生による観光情報を織り交ぜた車内放送もあるので、地域全体で乗客を迎えようという意気込みが伝わってきます。

室蘭本線の復旧後の「ニセコ」どれだけ乗ってた?

 乗車した9月11日は金曜日ということもあってか、乗車率はおよそ4割程度でした。山線沿線にはニセコや倶知安といった国内有数の観光地があります。倶知安町だけでも2025年度の観光客数は約164万人。これほどの観光需要を抱える地域を走る列車だけに、特急「ニセコ」には、まだ利用を伸ばす余地があるようにも感じます。

Large figure3 gallery19函館本線沿いでは北海道新幹線の建設が進む(古橋龍一撮影)

 札幌―函館を移動するルートとして見ると、山線は圧倒的に不便です。しかしニセコ・倶知安エリアへの観光を組み込んだ旅程を想定すれば、山線を使った鉄道旅も十分に選択肢となるでしょう。

 今回の室蘭本線の被災をきっかけに、バックアップルートとしての山線の存在価値を議論する声も少なくありません。とはいえ、多額の費用を投じてまで残し続けるべきかというと、広く賛同を得るのが難しいという結論に至るのもわかります。

 長万部駅や倶知安駅の周辺では、北海道新幹線の建設風景を間近に目にすることができます。そんな風景を眺めながら、改めて山線の存在意義について考えさせられました。

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