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九七式中戦車改が再び走る!? “世界唯一”のオリジナルエンジン復活計画が始動 日本の先進技術が80年ぶり咆哮なるか

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「まずはエンジンがなければ始まらない」

 戦車のスペックでまず注目されるのは、主砲の大きさです。しかし、本当に戦車を戦車たらしめているのは、エンジンです。どれほど強力な主砲を備え、厚い装甲をまとっていても、動けなくなれば巨大な障害物にすぎません。実際、戦場では敵の砲火だけでなく、機械故障や燃料切れによって放棄された戦車も少なくありませんでした。戦車兵にとって、主砲が撃てなくなること以上に恐ろしいのが、戦車そのものが動けなくなることでした。

Large figure1 gallery8日本陸軍主力戦車の九七式中戦車改(手前)と九七式中戦車(後)。同じ九七式だが「改」は対戦車戦用47mm砲を搭載している(画像:月刊パンツァー編集部)

 その「戦車の命」ともいえる一基の貴重なエンジンを蘇らせる挑戦が始まりました。NPO法人防衛技術博物館を創る会が、日本に里帰りした九七式中戦車改を動態保存する第一歩として、オリジナルエンジンの修復を目的としたクラウドファンディングを開始したのです。

 47mm戦車砲を搭載した九七式中戦車改は太平洋戦争中の日本陸軍を代表する中戦車ですが、現在日本に存在するのはこの1両だけです。世界には走行可能な九七式が数両存在するものの、いずれもエンジンや操向装置はオリジナルではありません。

 今回の修復が成功すれば、「オリジナルエンジンで走る九七式中戦車改」として世界唯一の存在になる可能性があります。それは単なるレストアではなく、日本の機械技術史に新たな一ページを刻む挑戦でもあります。

 そのエンジンとは三菱製「SA一二二〇〇VD」空冷V型12気筒ディーゼルエンジンです。排気量21.7リットル、重量約1.5トンという巨大なエンジンですが、出力は170馬力と、現代の感覚では決して大きくありません。しかし、このエンジン自体が歴史的価値を持つ機械遺産です。現在、世界で稼働している同型エンジンは確認されていません。

 戦後、日本軍戦車は「小さく、軽く、弱い」というイメージで語られることが少なくありません。しかし、それはカタログスペックだけを見た評価に過ぎません。

 現代の主力戦車のほとんどがディーゼルエンジンを採用していますが、戦車用ディーゼルエンジンを世界に先駆けて完成させたのが日本でした。1934(昭和9)年制式化の八九式中戦車乙型は、世界初の量産ディーゼル戦車です。火災を起こしにくく燃費にも優れるディーゼルを採用した日本の取り組みと技術は先進的でした。

戦車黎明期に生まれた純国産ディーゼルエンジンの価値

 もちろん課題はありました。出力ではガソリンエンジンに及ばず、大型化する戦車への発展には限界もありました。戦車王国ドイツが最後まで戦車用ディーゼルエンジンの開発に成功しなかったのは、重戦車を動かす大出力が実現できなかったことも要因の一つです。日本とはニーズが違います。

 また、カタログスペックに表れにくいのが稼働率です。いくら高性能でも故障ばかりでは戦力になりません。日本の戦車部隊が本格的な機甲戦を経験したのは1939(昭和14)年のノモンハン事件でした。配備された八九式中戦車は作戦発起点までの軟弱な悪路200kmの行軍で落伍車がなく、作戦発起時間までに全車が揃っていました。これは戦車黎明期の実戦状況下では驚くべきことです。

 前年1938(昭和13)年、ドイツ軍はオーストリア進駐にあたり500~1000kmを路上行軍しましたが、30%の戦車が落伍しています。ノモンハン事件と比べると行軍距離は長いものの、環境の整ったヨーロッパ域内の路上行軍でこの非戦闘損失は、作戦行動に大きな影響を与えます。当時の日本戦車が国情や運用思想に合わせて生み出された純国産技術で、高い戦闘力を発揮していたことは、もっと評価されてよいでしょう。

 今回修復されるエンジンは動かなくなって約80年が経過していますが、専門家は再生可能と判断しています。しかし、設計資料も部品もほとんど残されておらず、外観を整えるレストアとは異なり、戦車を走行させる出力の状態まで修復する作業は困難が予想されます。

 NPO法人防衛技術博物館を創る会は、これまでにも九五式軽戦車や九五式軽戦車改造ブルドーザー、くろがね四起をレストアし動態保存しています。エンジンが始動すると、跳ねるように動くタペットのメカニカルな動き、回転する冷却ファン、作動音や排気音、熱気、排ガスの臭いまで、実物が五感に訴えかける情報量は圧倒的です。ネットや書物では伝わらない「生きた歴史」が実感され、見学者を魅了します。機械遺産の価値は、静態保存のように「残っている」だけでは不十分です。「動くこと」で初めて見えてくる技術があり、感じる歴史があります。

 九七式中戦車改が稼働状態まで復元するには2~3年を要する見込みです。しかし、戦車はエンジンに火が入り、自らの力で履帯を動かして初めて本来の姿を現します。その第一歩となる今回のプロジェクトは、一基のエンジンを再生するだけではありません。日本の機械技術と戦車史を「動く文化財」として未来へ受け継ぐため技術的困難に加え、資金面でも大きな挑戦です。まずは「エンジンがなければ始まらない」のです。

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